イアン・ブレマーが、トランプ暗殺未遂事件を受けて流したこちらとこちらの2つのビデオをツイッターで以下のように紹介している。
まず事件後に流したビデオの紹介ツイート。
7/14ビデオ紹介ツイート1
america’s dangerous cocktail: political extremism, disinformation + more gun availability & violence than any g7 country (by a long margin)
we should be prepared for more violence
america now needs a bipartisan denunciation of political violence & call for calm, peaceful transition of power
and i fear biden & trump supporters will have no such interest
(拙訳)
米国の危険なカクテル:政治的な過激主義、偽情報、および、どのG7諸国より(遥かに)銃が入手しやすく、暴力が多いこと
我々はさらなる暴力を覚悟すべきである
今の米国が必要としているのは、超党派の政治的暴力への非難と、冷静で平和的な権力の移行の呼び掛けである
残念ながら、バイデンとトランプの支持者はそうしたことに興味を持っていないと私はみている
we’ve seen events like today’s apparent trump assassination attempt in many countries facing instability
and it frequently does not end well
(拙訳)
今日のトランプ暗殺未遂のような出来事は、不安定な状況に直面した多くの国で我々は目にしてきた
そしてその行き着くところは宜しくないことが多い
ちなみにこのビデオの最初の方ででブレマーは、事件直後にトランプが拳を突き上げた映像は、トランプの選挙活動にとって「プラスのアピールになりかねない*1」、という趣旨のことを述べている。その映像のイメージは、衰えを見せているバイデンとはおよそ対照的、とブレマーは指摘する。
その上で、本来は米国は暴力反対で団結すべきだが、そうはならず、もっと多くの暴力が訪れるだろう、と予言している。その危険性は1968年以来ではなく、南北戦争以来のものである、とブレマーは警告する。
ビデオの最後の方でブレマーは、民主主義が危機に瀕している主要な民主主義国は米国だけ、と指摘している。インド、欧州、英国、メキシコなど世界では今年に入って多くの国で選挙が実施され、平和裡に権力が移行した国もあったのに、米国では危機が高まっている、とブレマーは言う。
次いで、翌日に流したビデオの紹介ツイート。
7/15ビデオ紹介ツイート1
when you compare trump to hitler and say he’s an existential threat to the country…
or when you say biden is destroying america and going to start world war iii…
you shouldn't be surprised when there's violence
i want this country to rally together and unite behind the idea that political violence in all forms is something that a healthy democracy cannot and should not tolerate
far more likely we continue down the road of “us” vs “them”
(拙訳)
トランプをヒトラーに喩えて、国の存亡に関わる脅威だ、と言ったり、
あるいは、バイデンは米国を破壊しつつあり、第三次世界大戦を始める気だ、と言ったりすれば
暴力が生じるのは驚くに値しない
この国が一体となって、あらゆる形態の政治的暴力を健全な民主主義は許容できず、するべきでもない、という考えの下に団結することを私は望むが
それより遥かに可能性が高いのは、「我々」対「奴ら」という道を我々が進み続けることだ
i'm a little offended that vladimir putin thinks we need his help to destroy our democracy.
we're more than capable of doing that on our own.
(拙訳)
ウラジミール・プーチンが、我々が自国の民主主義を破壊するのに彼の手助けが必要だ、と考えていることに私は少しむっとしている
我々は自分自身でそれを成し遂げるのに十分以上の能力を備えている。
2番目のツイートはもちろん皮肉だが、このビデオでは、外部からの脅威によって米国が超党派で団結した911と、内部分裂が進んでいる現在の状況を対比させている。ブレマーは、トランプがヒトラーの再来であり、何としても止めねばならない、という見方を否定し、そうしたレトリックの危険性を非難しつつも、トランプが米国の分断を利用して大統領に当選したことや、連邦議会襲撃事件を煽ったことも同時に指摘している。トランプは指導者というよりも勝者であり、勝敗をつけたがる性癖がある、とブレマーは指摘する。しかし、米国は勝者と敗者の国となるべきではなく、尊敬できる指導者の下でのチームとなるべき、というのがブレマーの主張である。その点で今回の暗殺未遂事件からは誤った教訓が学ばれたのではないか、とブレマーは危惧する。
SkyNewsの別のインタビュービデオのツイートに関するやり取りでブレマーは、この危機にツイッターが果たしたネガティブな役割も指摘している。具体的には、連邦議会襲撃事件を除けば米国の権力移行は平和的に行われてきたのであり、ブレマーの見方は悲観的過ぎるのではないか、というツイートに対し、以下のように応じている。
i’m looking at what americans believe. they’ve been listening to four years of “rigged election!” from trump and now “trump’s a dictator!” from the left. made much worse by disinfo/algorithms on this site.
i see us democracy as in crisis.
(拙訳)
私は米国人が何を信じているかを見ている。彼らは4年間、トランプが「不正選挙!」と言うのを耳にし、今は左派が「トランプは独裁者だ!」というのを耳にしている。このサイトの偽情報とアルゴリズムで事態は一層悪くなった。
我々の民主主義は危機に瀕していると私はみている。
また同じSkyNewsのツイートに対し、逆に、トランプの民主主義への脅威を過小評価しているのではないか、というツイートが付いたのに以下のように応じている。
mentioned even in this clip. trump completely unfit for office in my view. but what i personally like has zero to do with analysis.
(拙訳)
このビデオでもその話はしている。トランプは政権の座に就くのには完全に不適格である、と私はみている。しかし私の個人的な好みは、分析とは完全に切り離している。
そのほか、トランプが副大統領候補にバンスを選んだことについて以下のように評している。
true. it’s also the opposite of a unity choice. trump wants to win, he’s not interested in unifying the country.
(拙訳)
(バンスはトランプが望むように攻撃的で、知能が高く、会話能力も優れている、と指摘したツイートに対し)確かに。また、これは団結とは正反対の選択だ。トランプは勝ちたがっており、国の団結には興味がない。
さらに、ウクライナ戦争をバイデンのせいとしたDavid Sacks*2の共和党大会での演説について以下のように反応している。
majority of gop doesn’t agree with his russia position. but trump and vance do.
(拙訳)
共和党の大部分は彼の対ロシア姿勢に賛同しない。しかしトランプとバンスは賛同している。